リベロ
ソニー、愛媛、YKK AP、Honda FCと続く上位チームとの直接対決シリーズ3戦目。ホリコシは従来の4バックから、ナリをセンターに据えた3バックにシステムを変更して2-0でYKK APを撃破。得失点差で単独3位に浮上し次週のHonda FCとの対決にますます期待が高まります。
小見監督は、5月8日のアルビレックス新潟(サブ組)との練習試合で試された3バックシステムを採用し、前節の愛媛戦で負傷し大事をとって途中交代したアマラオが復帰してきた以外は、練習試合と同様のスタメンでYKK APとの負けられない一戦に臨みました。
試合開始から、YKK APが積極的な攻勢をかけてきますが、両ウィングバック(蔵川、深田)と羽山の守備意識が高くYKK APはなかなか効果的なパスをフォワードに供給できず、チャンスは訪れるものの得点を奪うことができません。また、この日3バックのセンターに起用されたナリは、当初はとまどいもあったものの徐々に落ち着きを取り戻し、冷静なコーチングと的確なポジショニングによりYKK APの攻撃をしのいでいました。
先制点は前半21分。カウンター気味に左サイドを破った深田のクロスをGKの直前で右足に合わせたアマラオの技ありシュートでYKK APゴールのネットを揺らします。ここまでボールポゼッションを有利に進めていたYKK APにとっては悔やみきれないゴールとなりました。
失点したYKK APは若干3トップ気味になりながらホリコシゴールに迫り、混戦の中から2度ほど決定的なチャンスを迎えますが、GK鏑木のファインセーブや体を張ったクリアで得点を奪うことができず前半の終了を迎えます。
スコア上は1-0でホリコシがリードしていたが、1-2で負けていてもおかしくない試合展開で、後半に向けて建て直しが必須と思われる内容でした。両サイドの守備意識が高いのはよいのですが、それが高すぎてポジションが低くなり攻撃時の厚みが足りなかったため受けに回ってしまったような印象を受けます。
サイドが変わって後半に入ると、ホリコシはFWの森に替えて平間を投入し前線で左右に流れる動きが加わります。前半に比べると両サイドも高い位置でプレイする機会が増え、特に右サイドの蔵川から決定的なチャンスが生まれるようになります。一方のYKK APは縦にボールを入れる攻撃が多くなり、次第に両者の形成は逆転。ボールポゼッションはほぼ五分五分から若干ホリコシ優勢に変わり、YKK APの単発的な攻撃が目立ち始めます。
残り時間も10分を切り徐々に焦りの見えるYKK AP。後半37分にはセットプレイからのボールをキャッチしたGK鏑木のパントキックがFW平間と相手DFの間に落ち、うまく体を入れ替えてDFの裏を取った平間が抜け出して、相手GKとの1対1を冷静に決めて追加点を奪います。平間の動きもよかったが、その動きを読んでドンピシャのコースに低くて速いパントキックを蹴ったGK鏑木のファインプレイでした。
その後は、ロスタイム4分を含む残り時間をうまくしのぎ切ったホリコシが、上位チームとの直接対決を制しJリーグ昇格へ向けて一歩前進しました。
愛媛戦の後、チーム事情により本来のボランチではなく3バックのセンターで起用されることが濃厚になったと聞いたとき、ナリの弱点でもある対敵動作の軽さという弱点と、視野の広さに裏づけされたコーチングとポジショニングという特徴が、3バックのセンターでどのようにバランスされるのか興味津々でした。
一般的な3バックの布陣では、相手2トップに対してマンマーク的に二人のCBが配置され、カバー役としてセンターにフリー(特定のマークを持たない)な選手を置きます。そしてこの選手の特徴に応じて、そのポジションにつく選手はスイーパーと呼ばれたりリベロと呼ばれたりします。井原が「アジアNo.1リベロ」と呼ばれていた時代もありましたが、私が持つリベロのイメージは古くはフランツ・ベッケンバウアーやフランコ・バレージであり近年ではホン・ミョンボで、井原はあくまでもスイーパーというのが持論です。
そんな私のイメージからすると、今回のナリの役割はリベロではなくスイーパーであり、リベロとしてはまだまだ消化不良の部分が多い。確かにストッパー役の二人と連携してうまくスペースを埋め、フォワードの動きによって生まれるスペースをカバーし、マークの受け渡しやボランチとの連動も無難にこなしていたとは思いますし、ナリのヘディングによるクリアが多かったことからもスイーパーとしての仕事はこなしていたといえます。
しかし、ことリベロとして何ができたかといえば正直何もできていなかったと言わざるを得ません。3バックにして、ボランチと両サイドの意識を前に向かせ攻撃に厚みを出すとともに、相手のカウンター攻撃に対してケアしていこうという狙いは満たせたと思いますが、リベロとして最後尾からゲームの組み立てに「積極的に」参加することはまだできていません。
それはナリだけの問題ではなく、周囲との連携や試合の流れ、その試合の持つ意味合いなどによって変わってくるものだと思います。ナリの特徴である幅広い視野から局面を打開する一発のロングフィードが繰り出されたり、ゴールへの最短距離を見据えたパスが供給されるようになったとき初めてナリらしいリベロを演じることができたといえるでしょう。
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