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サッカーで得たもの

こんばんわ、期末を無事に乗り切って一息ついている年寄りGKです。昔、若い頃にサッカーをやっていた人に質問です。サッカーから皆さんが得たものって何ですか? 社会に出てから得たものは役立っていますか?

※ 別館の『起死回生』に投稿したエントリーと重複していますので悪しからずご了承ください。

私は高校時代にサッカー部に籍を置いてました。私の通っていた高校は新設校で私が2期生、当然なんの歴史も実績も持っていませんでしたし、サッカー 経験者は部員の半分くらいしかいませんでした。私も高校に入ってからサッカーを始めたんです。でも、最後の高校総体広島県予選でベスト16まで行ったんで すよ。今から20年くらい前ですけどね。

夏の合宿は毎年救急車の出動です。人間が本当に口から泡を吹くっていうのをあのとき初めて知りましたね。体中の水分が無くなって汗も出なくなり、体 は白い粉をふいて。当然、食事なんか喉を通るはずがありませんが、食べなきゃ益々体力を失って苦しくなるので無理して食べる訳です。吐きそうになりながら もゆっくりと咀嚼して少しずつ喉に流し込んで行くんです。

今から20年くらい前の高校サッカーというのは、攻撃はキック・アンド・ラッシュ、いわゆる縦ポンサッカーが中心で、守備は完全にマン・ツー・マ ン。システムは4−2−4でセンターフォワード2人に左右のウィンガーがおかれ、中盤には2人のディフェンシブハーフといわれる守備専門のミッドフィール ダーをおき、サイドバックが攻撃参加するなんて考えられもしなかった時代でした。

でも、私たちは見てしまったんです。1974年のワールドカップ西ドイツ大会でトータルフットボールを。クライフやニースケンスが中心となって奏でる流れるよに華麗なパスサッカーを。憧れました。当時の自分たちのサッカーがどんなにみっともないサッカーに見えたことか。

当時の監督は日本体育大学出身でまだ若く、6人で守って4人で攻撃するスタイルをかたくなに守っていました。一方、顧問を勤めていた数学の先生は当時としては珍しいことに海外サッカーに明るく、以前から縦ポンサッカーに疑問を持っていたようでした。

監督が研修のため1ヶ月近く留守にした隙に、顧問と私たちはそれまでの縦ポンサッカーを捨ててオランダばりのパスサッカーを練習し、木村和司(大河小学校の1年先輩です)や金田喜稔などを擁した広島県立工業高校と並ぶ強豪校だった国泰寺高校との練習試合に臨みました。

理論派コーチであった顧問と一緒に、1ヶ月間に渡りみんなで考え作り上げてきたパスサッカーは強豪校を翻弄し完全にゲームを支配することができたの です。残念ながら得点こそ奪えませんでしたが、自分たちにもオランダと同じようなパスサッカーを実現できる可能性はあるんだ。一人一人の力は強豪校にはか なわないけれど、人とボールが動いて強豪校の選手一人に弱小校の選手二人で挑めば勝機はあるんだということに気付いた試合でした。

残念ながら、オランダっぽいパスサッカーは監督が研修から帰って来たら封印されてしまいましたが、この1ヶ月間に顧問と一緒に作り上げたパスサッ カーの根本にあった『創意工夫』が私がサッカーから得たものです。そして、それは今でも会社勤めのなかで私自身の唯一にして最大の武器として大活躍してい ます。

サッカーで得たものが、プロサッカー選手でなければ活かせないということはありません。72時間に渡る徹夜で客先のトラブルに対応して無事に解決し、客先からねぎらいの言葉をかけられた時の喜びは、延長戦ロスタイムの決勝ゴールにも等しい充実感があります。

72時間集中してトラブルの原因究明と対処策を考えられる体力と耐久力もサッカーから得ました。夏場の合宿で泡吹いて倒れることに比べればどうということはないです、水も食事もとれるし汗も出なくなるほどの極限状態に追い込まれる訳でもないし、楽勝です。

常に最悪のケースを想定して『手だて』を考えておくこともサッカーから教わりました。ソフトウェアの開発プロジェクトにおいて、日々刻々と変わる開 発状況や突発的に発生する予想外の障害に対処し、その場その場で適切と思われる手を打つためには、最悪の場合はこうするしかないなという腹づもりだけは用 意しておきます。

何とかその最悪ケースを回避するために情報を収集し、考え、何らかの決断をアウトプットする。一般社会でいわれる PLAN→DO→CHECK→ACTIONのサイクルなんてものは、サッカーでは90分間ずっとやってる訳で、ちゃんとしたサッカー選手にとっては別に意 識しなきゃならないほどのものでもありません。

サッカーの90分間のゲームの中では局面ごとに状況が変わるので、情報収集(ルックアップ)→(パスかドリブルかなどのプレイの)選択→(パスなど の)プレイ→プレイ結果の確認→新たな情報収集→…と延々とPDCAサイクルを繰り返していく必要がある訳で、もし選手たちにこれができないようだとチー ム競技としてのサッカーは崩壊してしまいます。

私がサッカーから得たもの。それは、『創意工夫』=考えること。考える時間を稼ぎだすために、いかに早く情報を収集(INPUT)するか、実行に関 わる時間をいかに短縮するか。PDCAサイクルに2秒の余裕があったとして、DCAに1.5秒かけるAさんと1秒で済むBさんでは、Pにかける時間を多く 取れるBさんのほうがより的確な行動を起こせる可能性が高い。

一方、考える時間がAさんもBさんも等しく0.5秒しか与えられなかったとしたら、Aさんが2秒かかるところをBさんは1.5秒で行動を終えること ができる。サッカーの中ではAさんの0.5秒遅れは致命的なミスに繋がりかねません。一般社会の中で、秒を日や週や月に読み替えてみたら、この行動の遅れ がどれだけ致命的か理解できますよね?

サッカーでいうところの考えるスピードというのは、テクニック、戦術、体力、走力などに比べると目につきにくいのですが、実は一番大事で基本的なこ となのにもっとも身につけにくい能力なのです。しかし、この能力のみが、唯一サッカーを離れても一般的に通用する能力だったりします。

自分で考えない人にサッカーは向かないというのは真実なのですよ。

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